【キネブラ】VOL.7 バス174
2000年6月12日にリオデジャネイロで実際に起こったバスジャック事件のドキュメンタリー。
その日、サンドロ・ド・ナシメントはバスに乗り込み、銃で脅し、乗客から金品を奪おうとしていた。しかし、警察に取り囲まれたことで事態は一転し、逃げるにも逃げられなくなった彼はバスジャックの犯人に。それから何時間もの間、乗客を人質に車内での立てこもりが続く。犯人は警察の説得にも耳を傾けず、女性客に銃を向け、何度も撃つ素振りを見せる。多くの警官がスタンバイしているにもかかわらず、なぜか警察は突入しようとしない。空もすっかり暗くなり、人質の疲れもピークに達したとき犯人が思わぬ行動に出る。
事件の模様がリアルタイムでテレビ中継され、全国の人々がかたずを飲んで状況を見守る、という日本の西鉄バスジャック事件をほうふつとさせる出来事が約1カ月違いで地球の裏側で起こっていた。偶然か、もしくは必然か、二人の犯人は社会的弱者であること、年齢が20歳前後であることなどいくつかの共通点を抱えている。場所は違えど大事件の「犯人」になるまでには、必ずそれまでに過程があり、隠された過去、トラウマがある。この映画は犯人であるサンドロ・ド・ナシメントの生い立ちや親戚、知人のコメントを通して、社会によって創り上げられた彼の本当の姿を映し出そうとしている。音声を変え、顔を隠しての出演者が多いことからも分かるように、ブラジルでこのような記録映画を撮ることは、実はとても危険なことである。これを完成させ、世の中に発表したジョゼ・パジーリャ監督の勇気は賞賛に値する。
原題 Ônibus 174
監督 ジョゼ・パジーリャ
共同監督・編集 フェリッピ・ラセルダ
共同製作 ホドリゴ・ピメンチウ
撮影 セーザル・モラエス マルセロ・グル